昨今では、長時間労働や劣悪な職場環境やパワハラ等が蔓延するブラック企業に対する対策として、働き方改革やパワハラ防止法の施行が行われています。
しかし、日本社会ではまだまだ劣悪な職場環境や職場内でのいじめで疲弊している方が減少しておらず、当社宛てにもいじめが原因によるお悩みの相談をよくいただきます。
この記事をご覧いただければ、職場でのいじめやパワハラとは何かを知り、解決するために必要な知識を得ることができるようになります。
退職を選択することも一つの手段ですが、現在の仕事を続けるという選択をされる場合の一助になれば幸いです。
1. 職場でのいじめの内容と件数
厚生労働省は、全国の労働局などに寄せられた相談内容の統計をまとめたものとして「個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表しております。以下のグラフを見ていただいたように、平成24年から令和3年にかけて、いじめ・嫌がらせによる労働相談は常に1位かつ増加傾向にあります。
令和3年については、「いじめ・嫌がらせ」の労働相談件数は80,000件を超えている状況です。
厚生労働省は、いじめに関する相談として具体的に次のような事例を挙げております。
事例1:
「相談者は、定例会議の際に事業主から参加者の前での叱責や目標未達成について人格を否定するような発言を繰り返し受けていた ため、事業主に対してこうした言動を止めるように訴えたが、事業主は 翌日になると同様の言動を繰り返すなど、改善が見られなかった。」
事例2:
「相談者は、元上司から直接の上司でなくなった後もメールで批判されるなどのいじめ・嫌がらせを受け続け、事業主に対応を求めたが改善されなかった。その後、2年間就労を続けたが、ストレスにより心身に不調を来たしたため、退職することとなった。」
叱責や人格否定を代表とする「いじめ・嫌がらせ」は珍しいことではありません。あなたやあなたの職場は大丈夫でしょうか。
また、「職場いじめ」の約半数が「同僚」による行為となっております。「職場いじめ」と聞くと、「上司によるパワハラ」を想像する人が多いかと思います。しかし、統計を見ても、同僚による職場いじめが多いことがわかります。
2021年の厚生労働省による「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、「パワハラ」に該当すると判断した事案があった企業1990社のうち、ハラスメントの加害者と被害者の関係について、「部下から上司に対する事案」が7.6%、「同僚同士の事案」は36.9%あります。「部下から上司に対する事案」と「同僚同士の事案」を合わせると44.5%と、多くの割合を占めていることがわかります。
2. 職場でのいじめが放置される3つの理由
働き方改革やパワハラ防止法の施行がされる近年、職場でのいじめがなぜ放置されてしますのでしょうか。そこには「会社」という組織がもたらす3つの理由があります。1つ目は「職場ストレスの発散」、2つ目は「労働者の心神喪失・思考停止」、3つ目は「組織の規律を守るため」です。これらは決して職場でのいじめを許す理由にはなりませんが、現在の社会で職場にいじめが発生する原因となっております。それぞれ解説いたします。
(1)職場でのストレスの発散
つらい労働によって生じたストレスを、その労働環境に責任のある経営者に向けるのではなく、職場の同僚や部下をいじめることで発散するものです。経営者の視点では、不満の矛先を経営者から被害者にそらす効果を持っています。そのため、経営者は見て見ぬふり、すなわちいじめを放置することにつながります。
(2)心神喪失
長時間労働や過酷な労働環境において、理不尽ないじめによって思考を停止させ、「心神喪失」状態に陥らせることで、労働者が現状に疑問を抱かなくなり、黙って過酷な労働に従事するようになります。経営者の視点では、労働者から職場環境や労働環境の改善の声を上げられにくくなるという効果があるため、いじめを放置することにつながります。
(3)組織の規律を守るため
いじめが容認されない世の中において、この理由は異様に思われるかもしれません。しかし、職場いじめが発生する原因として論理的で残酷な理由の一つとなっております。
長時間労働やハラスメントに耐えられない労働者、生産性の低い労働者、権利を主張する労働者など、経営方針にそぐわない労働者は、同じ立場の労働者から「いじめてもよい」「人として扱わなくても許される」対象とされ、職場いじめの標的となることがあります。
加害側の労働者の視点では、同じ会社組織内で経営方針にそぐわない労働者に対して「排除」「反面教師化」をすることで、自分を会社にとって役に立つ存在であると認識し、働くための活力とします。
経営者の視点では、能力の低い労働者や自らの邪魔となる労働者を排除し、従順な労働者の活発化につながるため、いじめを放置することにつながります。
3.職場でのいじめ被害の解決方法
自分や周りの人が職場でのいじめ被害に逢っていた場合、どうするべきでしょうか。
会社や上司への相談はお勧めしません
真っ先に思いつくのは、会社や上司に相談するという選択肢です。しかし、「②職場でのいじめが放置される3つの理由」で述べたように、会社という組織においては経営者にいじめを放置する判断をする強い動機があるため、会社や上司に相談することはお勧めしません。いじめ被害を過小評価して判断したり、そもそもなかったことにされてしまうことも多々あります。
いじめ被害を録音・記録する
会社にいじめ被害の事実を認めさせるためには、最優先するべきは証拠集めです。メールやチャット、SNSで被害を受けた場合は、パソコンやスマートフォンの画面を撮影したり、スクリーンショットを撮ったり、文章のデータを保存しましょう。暴力で負傷させられた場合には、その箇所を撮影し、病院で診断書をもらうことも効果的です。
特に効果的なのは、「録音」です。ICレコーダーやスマートフォンのアプリで、相手の発言や行為を録音しましょう。
退職する
いじめ被害を録音・記録することは効果的ですが、職場いじめを受けている状況においては、プライベートな時間ではそれらを忘れたいものです。録音・記録を振り返ることで自らの辛い気持ちを増幅させてしまい、活力をそいでしまうというデメリットがあります。
また、会社に対して戦う姿勢を見せたとしても、経営者にはいじめを放置する動機があるため、戦いが難化・長期化してしまうリスクもあります。
そこで、職場でのいじめ被害の解決方法としておすすめしているのは、「退職」です。経営者がいじめの解決を回避するのであれば、被害者がいじめ自体を回避することにも当然正当性があります。
退職にあたって、「退職を上司や会社に申し出るのが怖い」・「退職後の生活費が不安で辞められない」といった不安があるかと思います。しかし、そのような不安は解決可能です。
まとめ
今回の記事では職場でのいじめの内容と件数から、いじめ被害の解決方法までご紹介しましたが、理解は深まったでしょうか?是非参考にしてもらえれば幸いです。